なぜ繰り上がり・繰り下がりができないのか?

 

 

繰り上がり・繰り下がりができない理由

なぜ,繰り上がりのある足し算・繰り下がりのある引き算ができないのかを考える前に,もっと大きなテーマであるなぜ計算ができないのかという問題があります。

この問題を解決するキーワードはsubitizingであることを 「なぜ計算ができないのか」 でご説明いたしました。

繰り上がりができないという問題を解決するキーワードもsubitizingが関係します。より詳しくは「subitizingの組み合わせ」です。なぜ,「subitizingの組み合わせ」が,繰り上がりができないという問題を解決するか説明いたします。

1992年,国際的な総合化学ジャーナルNatureに,Addition and subtraction by human infants という論文が掲載されました。著者はカレン・ウィンという方です。ここでは,生後5か月の赤ちゃんがsubitizingtができることのみならず,1+1=2,2-1=1等の単純な計算も理解しているということが示されました。

                                     

実験の方法は非常に面白く,興味深いものです。ここでは,その実験方法に言及するのは本テーマから離れていしまうので差し控えます。興味深いのは,5ヵ月の赤ちゃんが単純な足し算を理解しているということです。これは,どのようなことを意味しているのでしょうか。subitizingとはどのような関係があるのでしょうか?

赤ちゃんは,言語を理解していません。なので,足し算とは・・・,引き算とは・・・を理解しているとは到底思えません。人間は生得的にsubitizingという数認知能力があることから考えると,このカレン・ウィンの実験は,赤ちゃんは単なるsuibitinzgではなく,subitizingの組み合わせでも認知できると考えることができます。

このsubitizingの組み合わせとはどのようなものなのでしょうか。

大人がsubitizingできる範囲は5です。6はsubitizingできません。でも,6は何らかの形でsubitizingを用いて認知しているいるはずです。6以上の数はsubitizingとはまったく関係ないと考えることは自然ではありません。そこで,6は1のsubitizingと5のsubitizingの組み合わせで認知していると考えるのです。

このことは古代文明の数字からも説明できます。「なぜ計算ができないのか」ではsubitizingが古代文明の数字にも見られることを説明しました。マヤ人,リキュア人,アラム人の記数法における6以上の数を見てください。5を示す数字と1から4までの数字の組み合わせで,6,7,8,9 表現しています。

また,我々は,両手を広げて左手に2つのリンゴ,右に1つのリンゴを持っているとき,左右を交互に見ていくつあるか把握できます。数えないで,自分が持っているリンゴは3個であると認知できます。これも,subitizingの組み合わせです。

subitizingの範囲は5までですが,組み合わせることにより5より大きい数もsubitizingで認知できるのです。

subitizingの組み合わせを具体的に見ましょう。

1と2の組み合わせを[1,2]と書きます。すると8の認知は[3,5]となります。ここで,6も入れて8を認知しようとすると一見[2.6]としたくなりますが,6はsubitizingできないので[2,4]と認知することになります。従って,8の認知において6も含めた組み合わせで認知する場合は[2,[1,5]]と認知することになります。この表記法で2~10までの数認知をsubitizingの組み合わせで書いてみると以下のようになります。なお,6~9の組み合わせによる認知では5を含めた認知が最も簡単なので,例えば8の認知は,[2,[2,4]]ではなく,[2,[1,5]]を用いてます。        

人間が本来もっているsubitizingという能力から考えてみると1~9及び10は上記のようにsubitizingの組み合わせで認知することができます。そうすると,十進法上の各位は独立して認知できるので,足し算,引き算などの計算するということはsubitizingの組み合わせを変化させること考えることができます。

     

ここで,繰り上がりのある8+3の計算を考察します。この計算は繰り上がりのある足し算です。一般に行われている指導は,まず,10についての8の補数を考えます。すなわち,8に何を足すと10になるかを推定させ,ここから2を求め,3を2と1に分解します。そして,8+2で10を作りこれに1加えて11にします。算数の苦手な子はまず,これが何を言っているのかわかりません。

仮に,理解できたように見えても,例題をcounting(数え上げ)で考えているので,subitizingが入る余地がありません。従って,練習問題を解く段階になっても,一つ一つ数えて補数を探すため時間がかかります。学習開始時に示した例題の理解の段階では,補数を探し,加数分解ができるように見えますが,単に見えるだけです。

そもそも,指導者の指導目的は補数のアルゴリズムを習得させることにあるはずです。しかし,算数が苦手な学習者は,counting(数え上げ)のアルゴリズムのままで取り組もうとします。ここに繰り上がりができない原因があるのです。

     

これを解決するためには,countingではなくsubitizingを使うように指導すればいいのです。

subitizingは人が生得的に持っている能力なので,subitizing活用して計算すれば簡単に計算できるはずです。

実は,色そろばんにはこのsubitizingの組み合わせを簡単に表現できる仕組みがあり,色そろばんを使うことにより簡単に繰り上がり,繰り下がりも計算できてしまうのです。その原理を説明します

下図をご覧ください。

この仕組みにより,すべての数は 下図のようにsubitizingの組み合わせで認知できるようになります。

繰り上がりの足し算もsubitizingの組み合わせとして,簡単に計算ができます。下図をご覧ください。

学習用動画で確認すると容易に理解ができるでしょう

   

繰り下がりに関しては,繰り上がり以上にわからなくなる学習者が多いです。計算が苦手な学習者が間違うパターンは,17-8=11とやる間違いです。7から8が引けないので,8から7 引いてしまえということです。ブロック,〇などを書いて説明を受けますが,結果として何を言っているのかわからなくなります。これも,,色そろばんで学習すれば簡単にわかります。動画をご覧ください。

 

 

 

現在行われている指導方法を色そろばんの視点から考察してみる

補数を学習する必要はない

繰り上がりの計算においては,補数の学習が行われます。そこでは,例えば「10は8と□」等の文の理解が必要になります。まず,この分が何を言っているのかを理解してから,答えの2を導きます。苦労して,質問の意味を理解しても,計算が苦手な児童生徒はcountingで答えを導きます。これが学習者にとってはめんどくさいのです。しかし, そもそも,文章の意味を理解できない学習者はこれ以上学習を進めることはできません。

一般的な指導方法においては,この補数の学習は,繰り上がりに進むための重要なステップと捉えられています。従って,記憶が定着するまで継続的に指導すべき内容となっています。しかし,わからない児童生徒は,countingで数え上げます。 そして,指導者も,countingで指導します。結局,答えを覚えるしかないのです。荒行のように覚える人も少なくありません。

色そろばんではこの学習は必要ありません。よこの数をsubitizngで見つければいいだけなのです。難しい,補数を勉強するのはやめましょう。補数は色そろばんの操作を体験することにより自然に理解できるからです。

 

さくらんぼ計算(さくらんぼバナナ計算)も必要ない

また,一般的な指導方法では,10の補数を見つけただけでは計算は終了しません。次に,加数を分解し,10の塊を作ります。そして,最後に1の位の和を加えます。これは,ブロックで行うとかなりの手数になります。色そろばんではそろばん上の簡単な操作に帰着しているので,この計算過程のステップを踏む必要はありません。非常に簡単な玉の操作で十分なのです。つまり, さくらんぼバナナ計算は必要ないのです。(動画をご覧ください)

 

減加法を学習する必要はない

繰り下がりの引き算では,減減法よりも,減加法で指導される場合が多いでしょう。減加法の方が理解しやすいからです。

減加法は2つのステップに分解されます。繰り下がりのある2位数-1位数を考えれば,①10に関する補数を求める②被減数の1の位にその補数を加える。というステップです。これが難しいのです。「引き算なのになぜ足し算するの?」という質問を受けることも多いのではないでしょうか。  

色そろばんでは減加法で行われるようなめんどくさいステップはいりません。動画のようにsubitizingできる数の一つであるよこの数で玉を見ていくので加える操作は必要ないのです。もちろん補数を見つける操作も必要ありません。

ご覧のように色そろばんの学習で求められるのは,人が本来持っているsubitizingだけです。文を理解する能力は必要ありません。また,補数を求めるように,物事を逆に考える必要もありません。だから,誰でも計算ができるようになるのです。つまり,色そろばんの玉の動きは十進法の思考そのものを表しており,この具体物に習熟することにより抽象的な十進法の思考が頭の中に自然にできるのです。計算が嫌いになるわけがないのです。

 

 

色そろばんの効果

多くの指導事例のうちの一部を紹介いたします。色そろばんの素晴らしい効果をご覧ください。数感覚に基づいた暗算ができるようになるので,割り算,小数,分数への進むことができています。

Aさん

指導前は指を使っても,計算を間違っていた。色そろばんでの指導後は,色そろばんを使わないで3桁の足し算・引き算を暗算で計算することができた。

指導前

指導後

 

Bさん

指導前は繰り上がり,繰り下がりができなかった。特に引き算は指を使ってもなかなかできなかった。指導後は,色そろばんを使わないで3桁の足し算・引き算を暗算で計算することができた。

指導前

指導後

 

Cさん

お金の計算ができず,買い物をしても,いくら買っているのかわからなかった。指導後は,色そろばんを使わないで,3桁の足し算・引き算を暗算で計算することができ,お金の計算もできるようになった。

指導前

指導後

Dさん

学習前は指を使っても,簡単な足し算で間違うことが多かった。指導後は,色そろばんを使わないで,3桁の足し算・引き算を暗算で計算することができた。

指導前

指導後

Eさん

お金の計算ができず,買い物をしても,いくら買っているのか分からなかった。指を使って計算しているため,4+3=8という誤答もあり100の半分は10と答えることもあった。指導後は暗算もできるようになり,買い物もできるようになった。

指導後

Fさん

指導前は,指を使って計算したり,棒を書いて計算していた。指導後は,三桁の足し算・引き算を暗算で計算できるようになり,短期間で小数・分数の学習に入ることができた。

指導前

指導後

Gさん

指導前は,指を使って計算していた。掛け算九九も満足に答えることができなかった。指導後は,色そろばんを使わないで,3桁の足し算・引き算を暗算で計算することができた。小数の学習も問題なく理解できた。

指導前

指導後

 

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