算数障害の症状・検査・認知特性に合わせた支援

   

🧠 算数障害の症状・検査・認知特性に合わせた支援

        

「何度やっても計算の原理が定着しない」という問題は、努力不足ではなく、数の情報処理における脳の特性(算数障害)によるものです。当ページは、WISCやKABC-IIといった認知検査の視点を取り入れ、神経科学的知見に基づいた苦手さのメカニズムを克服する支援の道筋をご紹介します。

        

1. 症状と検査の視点:認知特性が示す困難の根源

        

1-1. DSM-5と文科省に基づく定義

   

算数障害(Dyscalculia)は限局性学習症(SLD)の一種です。全般的な知能発達に遅れがないにもかかわらず、数の処理や計算能力に特異的な困難を示します。

           
  • 有病率: 学齢期人口の約3%~7%と報告されています。        
  • 併存障害: ADHDやディスレクシアと高い割合で併存することが知られています。    
   

1-2. 認知検査が示す算数困難の裏側

   

算数障害の困難は、しばしばWISC(ウィスク)やKABC-IIといった認知検査の特定の指標の弱さとして現れます。

           
  • WISCの視点:                            
    • 視空間指標(VSI)の弱さ: 空間認知や視覚的情報の処理が苦手なことを示唆し、位取りの理解や図形の把握の困難と強く関連します。                
    • ワーキングメモリ指標(WMI)の弱さ: 複数の手順を同時に保持する能力が弱く、繰り上がり・繰り下がりや文章題の処理に困難を引き起こします。            
                   
  • KABC-IIの視点:                            
    • 継次処理の弱さ: 計算の手順を順序立てて実行するのが苦手なことを示します。            
               
   

2. 日常生活への影響と心理的ストレス

   

2-1. 困難の3つのタイプと具体的なつまずき

   

困難は、①数的知識、②演算技能、③数学的推論の3つのタイプに分けられ、いずれもサビタイジングといった基礎的な認知機能のつまずきに根ざしています。

        

2-2. 保護者のストレスと算数不安への共感

   

算数障害は、学業成績だけでなく、家庭生活と子どもの心に深刻な影響を与えます。この「見えない苦痛」に深く寄り添うことが重要です。

           
  • 💔 親子の関係性のストレス:  無理解からくる指導は、親子の間に強い緊張を生じさせ、親御様自身が「自分の教え方が悪いのでは」と自責の念に苦しむことも少なくありません。        
  • 🧠 算数不安(Math Anxiety):  失敗の経験が積み重なることで、お子様は算数に対する過度な恐怖や不安を感じ、自己肯定感の低下や学習回避行動につながります。    
   

3. 指導哲学:表面的な問題と「数感覚」の根源的な回復

   

3-1. 従来の指導と認知機能的アプローチの視点の違い

   

算数障害への支援には、環境・代償的アプローチと、認知機能的アプローチ(認知機能そのものに働きかける)の二つの視点があります。

        

従来の指導の限界: 従来の指導は、繰り上がりなどの単元の症状に対処しようとしますが、これは原因ではなく結果です。数感覚という土台が不安定なままでは、困難は必ず形を変えて再発します。    

   

3-2. 色そろばんメソッドの目的

   

色そろばんのメソッドは、「学年ごとのつまずき」を追う小手先の対応は行いません。すべての算数・数学の困難は、数の概念を脳内で「適切に符号化(エンコード)できていない」ことに起因するという哲学に基づきます。

           
  • 指導対象: WISCやKABC-IIで示されるような、視空間処理能力などの「認知機能そのもの」です。        
  • 目的: 学習の土台となる、数感覚(ナンバーセンス)を強化し、認知負荷を軽減して自力での問題解決能力を高めることです。    
   

4. 法的支援と長期的な影響:将来への見通し

   

4-1. 合理的配慮と日本の公的支援

   

算数障害を持つ子どもたちは、学校で合理的配慮を受ける権利があります。電卓やPCなど補助手段の使用の許可、評価方法の柔軟な対応などが具体的な配慮例です。

   

4-2. 成人ディスカルキュリア:早期支援の重要性

   

困難は大人になってからも続く可能性があります(成人ディスカルキュリア)。早期に認知機能のつまずきに働きかける支援を行うことが、将来の生活の質(QOL)向上に不可欠となります。

5. 色そろばんのメソッド(神経科学的裏付け)

なぜ色そろばんメソッドは困難の軽減を目指せるのか? それは、算数障害の困難に関連する認知機能に焦点を当てて働きかけるからです。従来の指導が「聴覚による言語記憶」に依存するのに対し、色そろばんのメソッドは数の量や空間処理を司る神経経路をターゲットにします。

   

認知特性に合わせたアプローチ:IPS(頭頂間溝)への働きかけ

   

算数障害の研究では、頭頂間溝(IPS)という、数の量や大小を直感的に処理する領域の活動低下が指摘されています。色そろばんのメソッドは、このIPSの活動に関連する視空間処理経路を意図的に活用します。

           
  • 空間的符号化の利用: 容易にsubitizingを機能させるために玉を特定の空間に配置・移動させることで、抽象的な数字を、脳が処理しやすい視覚的・空間的な情報へと変換します。これは、WISCのVSI(視空間指標)が司る認知機能の活用につながります。        
  • IPSの活性化: この「空間的な数の操作」を反復することで、IPSと関連する認知経路を強化します。これにより、数を「記号」としてではなく「量(空間)」として直感的に把握する、根源的な数感覚(ナンバーセンス)の知識ネットワークを再構築します。        
  • 演算の自動化: サビタイジング能力を活用し、複雑な計算プロセスを視空間的なパターン認識として自動化。ワーキングメモリへの負荷を回避しながら、演算スキルを昇華させます。    
   

この神経科学に基づいたアプローチこそが、色そろばんメソッドが単なる対症療法ではなく、困難のメカニズムに働きかけ、学習効率を向上させる理由です。

色そろばんメソッド:視空間スケッチパッドを主役にする符号化

           

色そろばんは、視空間スケッチパッドを主役に据えることで、脳が最も理解しやすい方法で「数」を符号化させます。

                         
  • 視覚化による符号化: 「数」をsubitizingの組み合わせの変化として記憶し音韻ループには依存しません。              
  • 操作の自動化:色そろばん固有の直感的な空間操作「たての数」「よこの数」「両替」を繰り返すことにより、十進法を具体的に体験できます。              
  • 結果: 記憶の「保存」と「再生」が容易になり、誰もが計算能力を自動化できるようになります。            
           
             

色そろばん固有の直感的な空間操作

             

たての数とよこの数(色そろばん上の8の多様な表現)

             
           
           
             

色そろばん固有の直感的な空間操作

             

両替(十進法の体験)

             
           
           

💖 親子の笑顔を取り戻した保護者の声(定性的評価)

             
               
                 

小学校4年男子のお母様(筆算学習でつまずき)

                 

公文式の引き算の筆算でつまずいてしまい、ドリルや知育教材を使ってみても効果は出ず、親子で頭を抱えていました。 そんな時にインターネットで色そろばん塾を知り、半信半疑で始めてみたところ、半年程でスムーズに計算ができるようになり本当に驚きました。 解いたら見直す意識づけも教えて頂き、始めたばかりの頃に多発していたケアレスミスも少しずつ減らす事ができました。 今では算数が得意科目になり、本人も、色そろばん塾にとても感謝している様です。 2年数ヶ月間ご指導頂き本当にありがとうございました。

               
             
             
               
                 

小学校5年男子のお母様

                 

一般的なソロバンで全然うまくいかなかった経験があるので、違いが出るのか半信半疑でした。藁にもすがる思いで始めました。 結果、1年前あんなに計算ができなかったのが嘘のように、今では普通に計算しているので、本当にやって良かったと思っております。 やるのとやらないのとでは、この先の学習の進み具合が全く違うものになったと思います。 (【補足】色そろばん学習開始時は、「幼少のころから公文やそろばんなどいろいろ試していたが、繰り上がりの計算では数えており、かけ算も含め計算ミスが多いので、数えずにミスなく計算ができるようになりたい」というのがご希望でした。現在は中学受験に向けて頑張っています。)

               
             
             
               
                 

小学4年生の保護者様

                 

高学年になり、算数の遅れが目立ってきました。学校の指導ではついていけず、藁にもすがる思いで色そろばんを試したところ、数の仕組みを根本から理解できたようです。本人の自信にもつながり、本当に感謝しています。

               
             
           
           
             
               

小学校5年女子のお母様 (ADHD・算数障害)

               

始める前は本当に何か支援を受けたほうが良いのかとても悩んでいました。でもいざ始めてみると、ぐんぐんと計算スキルが備わっていることを感じ、ここまで上達するとは思ってもみませんでした。本当にありがとうございました。 (【補足】色そろばん学習開始時は、3+4の計算も間違っていましたが、約1年半の学習で、色そろばんなしで三桁の暗算も当然にできるようになり、掛け算・割り算・小数・分数と難しい概念も理解できるようになりました。これは、色そろばんで数感覚を養うからできることです。)

             
           
           
             
               

高校1年男子のお母さま (ADHD,算数障害)

               

息子は軽度の学習障害があり計算や言葉、漢字を覚えるのも困難を抱えていました。小学6年生の時で、一桁の計算さえあまりできませんでした。 その為時には泣きながら勉強している事もあり、勉強に対する苦手意識がとても強く年齢が大きくなるにつれてその事が原因となり、学校生活や普段の生活への不安が大きくなっている状況でした。小学生卒業間近には、不登校になってしまいました。 親として何か良い方法がないかと、講演会に行ったりと、色々な学習方法を探していました。そんな中、色そろばんとの出会いがありました。 集中力もなく嫌々で勉強をしていた息子は当初は色そろばんの学習方法は不思議な感じでしたが、学んでいくうちに、一つ一つ色そろばんの学習のやり方も覚え、確実に計算もできるようになり、暗算までできるようになりまし‼︎ ×1位数の掛け算を,色そろばんなしの暗算で計算できるようになり,その後,小数・分数の学習に進み,無理数,方程式と学習が進み現在は数Ⅰを学習している)

             
           
           
             
               

小学6年女児のお母さま (ADHD,算数障害)

               

娘はは現在小学6年生ですが,4年生に進級する頃に幸運にも色そろばんに出会い2年程学びました。 計算が苦手で簡単な計算も指を使っていましたし,かけ算も6の段以降はつまづいていました。 色そろばんを始めた当初は,使い方が一般的なそろばんとは異なり戸惑いもありましたが,徐々に数感覚が身に付き、色そろばん塾を卒業する頃には掛け算はもちろん三桁の計算なら暗算も出来るようになりました。 短期間の劇的な成長に驚きました。また,色そろばんを続ける事により集中力も身に付きました。 始めた当初は,計算を解く事が出来ずイライラして泣いてしまうことが多々あったのですが,数感覚を養い問題が解けるようになると,気持ちもコントロールする事が出来るようになり集中して取り組めるようになりました。 娘にとって色そろばんで学んだことは,前に進むための大きな一歩となり大変嬉しく思っています。 感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。

             
           
           
             
               

30代女性 (算数障害当事者)

               

私は長いこと算数障害に悩んでました。どうして自分は繰り上がりのある足し算や引き算ができないのだろうとずっと悩み続けていました。 小中学生の頃のテストは,他の科目の成績はそこそこよかったものの,数学だけは全滅でした。ある時,インターネットで検索中に算数障害という言葉を知り,自分はそれじゃないかと疑い始めました。 「色そろばん」を同じくネットで知りさっそく私も学習を始める決意ができました。色そろばんの学習で嬉しかったこと・良かったことは,何よりも、いままでできなかったことができるようになったことです。 努力すれば自分でもできるという自信がつきました。又,同じ算数障害に悩んでいる方々にも,色そろばんをお勧めしたいですね。LINE学習でよかったことは,何よりもスキマ時間にできることです。また,分からないことや困ったことなどを気軽に質問できるからです。改めて学習を始めてよかったと思ってます。

             
           
   
       

【参考文献・参照元】
        – アメリカ精神医学会:DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)
        – 文部科学省:学習障害(LD)に関する検討会報告書
        – WISC-IV/V, KABC-II 関連研究、頭頂間溝(IPS)に関する認知神経科学研究        

   
       

この記事の著者:渡部 敬(わたなべ けい)

色そろばん発明者 / 第14回 辰野千壽教育賞 優秀賞受賞

10年以上にわたる教育現場での実践に基づき、計算指導の画期的な新しい方法である「色そろばん」とその理論を発明。

【文科省研究事業】
文部科学省「特別支援教育に関する実践研究充実事業」2019, 2021, 2022において研究実践が採用・掲載。算数学習に困難を抱える児童生徒への有効な指導法として、公的な教育データベースに記録されています。

【国立大学からの表彰】
国立大学法人上越教育大学より「第14回 辰野千壽教育賞」優秀賞を受賞。サビタイジング理論を応用した独自の指導体系は、教育実践研究の典型として高く評価されています。

辰野千壽教育賞の賞状

第14回辰野千壽教育賞 優秀賞 授与式にて。中央が発明者の渡部敬